他力の不安も敗けるが勝ちの試合 日本対ポーランド W杯ロシア2018 BBCスポーツ

すでにご存知の方も多いでしょう。一昨日(2018年6月28日)、ロシアW杯で日本対ポーランド戦が行われ、日本が0-1の敗戦となりました。セネガルと総得点等で並びましたが、「フェアープレーポイント」が上回り、日本が16強進出を決めました。

 

しかし、とりわけ後半約10分の日本の戦い方には、多くの批判があります。会場からブーイングが飛んだり、あるいは、海外メディアの中には「次に勝ってほしくない」等と辛辣なものまであります。

 

確かにそういう気持ちも分かり、見ている方としては何やってんだ?という思いも出て来ました。もっとも後半10分以外でも、次を考慮してのことか先発6人を入れ替え、どこかぎこちなくイライラした自分もいました。

 

そういう感じの中で、残り約10分を自陣でのパス回しに終始し、より怠惰な感じになったことは間違いないでしょう。けれどもこういう「消極的試合運び」は、ルールで禁止されていないようです。

 

またMF長谷部投入後にパスワークが始まり、ああこれは作戦だな、と思ってことも間違いありません。後出しジャンケンのように聞こえるでしょうが、これは色々言われるな、とも思いました。

 

「消極的試合運び」が始まる少し前だったと思います。別な会場で行われていたセネガルvsコロンビア戦で、コロンビアが1点をもぎ取りました。この時点で「フェアープレーポイント」のことが、HideIPVPN使ってサイトで見ていたBBCでもコメントされていました。

 

 

「消極的試合運び」を見ながら、わたしは2012年ロンドン大会のなでしこジャパンを思い出しました。対南アフリカ戦で、勝てば1位通過でアメリカと対戦することになったと思います。

 

それを避けるには2位通過する必要があり、引き分け狙いの試合運びをしました。試合後には、八百長などの言葉が出ましたが、八百長の場合相手と謀ってのことでしょう。的外れな言葉だと思います。

 

しかしなでしこの精神云々等の批判があったことは確かで、これもまた気持ちはわかります。しかし引き分け狙いの試合運びがルールで禁じられていることはありません。

 

作戦の1つでもあり、勝ち抜かなくてはならないスポーツの国際大会においては必要なことでもあるでしょう。しかも当時の佐々木監督は、試合後の記者会見で潔く引き分け狙いを語っていました。

 

後日の試合でBBCの解説者が彼がなぜそんなことを話したのか理由が分からないと言っていましたが、そうかもしれないな、と思いました。とにかく「消極的試合運び」は、なでしこでも行われ、わたしは肯定的に捉えました。

 

ロンドンオリンピック2012 なでしこジャパン全試合視聴記 BBCスポーツ

- 女子サッカー 1次リーグF組 日本vs南アフリカ

 

今回のポーランド戦でも、同様な立場です。国際大会であれば、ルールに違反していない以上、こういう「勝ち方」もあるでしょう。これも作戦であると思います。

 



 

しかし見ている方としては、ギャンブルと感じ不安になることもまた、確かです。コロンビアが勝つことが前提の作戦であり、マスコミでも言われている他力の姿勢でしょう。

 

もしかすると日本ばかりでなく海外のバッシングの理由も、こういう他力の面であり、自分たちでどうにかしない作戦にあるのかもしれません。けれども、タイトルにある通り、日本には「敗けるが勝ち」という諺があります。

 

また「肉を切らせて骨を断つ」という諺も似たような面があるかもしれません。なぜなら何らかの犠牲をしながらも自らが勝つ、ということに繋がるからです。

 

こういう自己犠牲の精神は、日本の伝統のようなものでしょう。もちろん海外においても「one for all,all for one(一人は全てのために、全ては一人のために)」という言葉もあります。

 

そうは言っても海外の方は「神」という概念が強いように思います。つまり絶対的な存在が自分たちの上にあり、それらに自分たちが身を捧げるということです。

 

しかし日本の場合、そういう「神」ではなく、一人一人の「私(わたくし)」が自らチームのために犠牲になろうという姿勢があるのではないでしょうか?もちろん、「個人」の考えが浸透している今では、西洋的な気持ちを持っている人も多くなっているかもしれません。

 

そうは言っても、どこかで「私(わたくし)」の精神は潜在的に生きているように感じます。「私(わたくし)」には「貴方(あなた)」という相手が浮かび、必然的に上ではなく横の関係性の中で自分を捉えます。すなわち自然とチームスピリットが生まれやすくなるでしょう。

 

こういうスポーツの国際大会に「私(わたくし」の精神が現れやすくなり、日本vsポーランド戦のような試合にも出てきたのかもしれません。

 

 

おそらく日本のチームスタッフは、ベンチでセネガルvsコロンビアの試合を見ていたのでしょう。そしてコロンビアの調子から勝てると算段できたのかもしれません。

 

わたし自身、ポーランドとの試合を見て、コロンビアは復活したと思いました。試合内容も非常に面白く、気持ちの良くなるようなパス回しが随所で見られました。

 

ベスト16はコロンビアと日本になる。そう思ったことは確かであり、結果的にそうなってしまいました。誰かは忘れましたが、緊迫感の中で思い切った決断をした西野監督は名監督である、と言っていました。

 

わたしの言葉にすれば、案外狸オヤジ?と思いますが、なでしこの佐々木監督同様、試合後の記者会見で素直に答えているように感じるので、日本人は正直と思ってしまう理由にもなり得ます。

 

- 西野朗監督「本意ではない選択だった」

 

ともあれ、わたしは作戦を肯定しますが、やっぱり見ている側としては他力であり、ハラハラしたことは確かです。こういうこともまた、国際大会ならではの出来事と言えるでしょう。

 

ベスト16ではベルギーと対戦します。昨年(2017年)に親善試合を行い、0-1で負けているようです。しかしワールドカップでも対戦経験があり、わたしの記憶では2002年日韓共催大会での一次リーグにおいてです。

 

日本が1点リードしながらも追いつかれ、結局引き分けたと思います。しかしあの頃のベルギーと比べればチーム力が上がり、タレントが揃っています。個人的に元フランス代表のアンリがコーチでいることに驚きました。

 

FIFAランクからも格上であることは間違いなく、ポーランド戦の状況から見ても、アウエイのようになってしまうことは確かかもしれません。それを翻すには、負けを覚悟で全力でぶつかり、最低でも良い戦い方をすることでしょう。

 

見る側のわたしは、勝ちは結果論という位の気持ちで視聴する予定です。日本初のベスト8。もちろん、そうなって欲しいという思いもあることは間違いありません。

 

 

そう言えば、英国メディアは日本バッシングが激しいようですが、イングランドはベルギーと一次リーグ最終戦を行いました。日本と同様、0-1の負けでベスト16ではコロンビアと戦います。

 

負けて残念と思うかもしれませんが、主力を温存した負けでメディアは全体的に称賛しているようです。なぜならブラジルがいる山を避けることができたからです。わたしが理解した中では、BBCのアナウンサーはコロンビアとは相性が悪くないと語っていました。

 

少なくともベスト8までは行けると判断し、戦力を落としたのかもしれません。つまり負けを見込んでのことです。結局、どこでもしているのでは?、と言いたくなります。

 

ただし、イングランドとベルギーの試合は、攻防があったことは確かです。これを鑑みれば、日本は誰しもが分かるような「消極的試合運び」をし、実に素直だったのではないでしょうか?

 

ウソも方便。国際社会の「正義」には、こういう面もあると言ったら的外れでしょうか? また、「fair」の考え方も違うのかもしれません。これは「No(ノー)と言える日本」が流行った頃から言われていたことで、今でも通じるのかもしれません。

 

 

わたしなりに言わせれば、ルールに従っているのであれば、どんなラフプレイをしても問題ないということが、常識のようになっている感じです。その点、日本はプレイそのものは実にキレイ過ぎると感じます。

 

審判への抗議でも、見苦しいと感じることは少ないです。現にイエローの枚数も少ない方であり、「フェアプレイ」に徹しているのは確かであると思います。

 

逆に作戦とプレイは違うんだ、くらいのことを言ってもいいと思います。言い換えれば、日本はルールを破らない作戦であれば必要時に行う、それはプレイとは異なる、ということでしょう。

 

幸い日本のマスコミに、今回のことを好意的に語っているところもあります。わたしがそういうものしか目にしていないと言えなくもないですが、ポーランド戦を別なことに当てはめてバッシングすることは、少々眉唾に感じます。

 

もっとも「ウソも方便」のようなことは、サッカーばかりでなく他のスポーツや様々な分野に共通することかもしれません。こういうことを理解していないと、国際社会を渡っていけないのでしょう。

 

ともあれ、運命のキックオフは日本時間で7月3日午前3時に訪れます。ポーランド戦は、2010年南アフリカ大会のベスト16で戦ったパラグアイ戦と同様、「poor game」として語られ続けるかもしれません。

 

しかしそんなことを翻すような、懐の深い試合をわたしは期待しています。地獄を見たからこそ、失うものは何もないでしょう。欧州等と比べれば歴史はまだまだ浅いですが、プロとしての自覚は確実に育っているようにも感じます。

 

ガンバレ!日本

 

参照: 

- リスク承知の負けて良し日本、薄氷の16強

- 長谷部「真実は結果の中にしかない

- 「ひどい試合」「喜劇的な結末」

- 勝因は「フェアプレーか勝負回避か」

- 決して博打ではなかった……賛否集まるポーランド戦西野采配の真相に迫る

- 疲労と余裕、日本とベルギーは対極/セルジオ越後