法医学捜査班(Silent Witness)には、今と葛藤がある BBCドラマ

先週(2011年2月第一週)のことになりますが、BBCドラマ「Silent Witness」、邦題「法医学捜査班」のシリーズ14が終了しました。現在、BBC iPlayerで視聴可能ですが、イギリス時間で、2011年2月8日までavailableとなっています。非常に時間が短く、今さら、と思われるかもしれませんが、今回このサイトで是非お話したいと思いました。

 

わたしは、HideIP VPNibVPNと契約しているので、VPN経由で、BBC iPlayerにアクセスし、シリーズ14全エピソードを視聴しました。邦題が「法医学捜査班」というように、犯罪捜査に絡んだドラマであり、なおかつ、日本でひと頃流行った「死体は語る」のイギリス・ドラマ版と言えるでしょう。

 

正直、犯罪の憂き目に遭った死体が主人公であるとも言え、ミイラ化した死体やまる焦げの死体などが登場します。あるいは、脳や内臓の解剖シーン、死体の写ったスライドの前で、推理を展開する場面などが、平然と描かれています。おそらくリアルな法医学の現場では、もっと生々しさがあるでしょうし、また、ドラマとは分かっていますが、さすがに中年のわたしでも、思わず、違った意味で唸ってしまうこともあります。

 

そういう時、いつも頭に思い浮かぶことは、脳や内蔵の一部を取り出し、メスで二つに切り、目の前に持ってきて、マジマジ眺めることを、よく毎日毎日できるよな、ということです。もちろん、ドラマとは承知していますが、法医学を勉強し、実際の現場に望んでいる人たちがいることは間違いないでしょうから、ちょっと想像しただけでも、こんなわたしでも、続けられないな、と思っています。

 

そうは言いながら、このドラマには、面白さや醍醐味があり、わたしなりに解すれば、できる限り、ヒューマン・ドラマの要素を取り入れながら、今の問題をも描こうとしている、ということです。たとえば、シリーズ14において、法医学班のキャップとも言える、Professor Leoが、Spending Cutによって、法医学班の予算が削られ、アシスタント技師を非常勤のように扱う場面があります。

 

日本でも多少なりとも報道されたと思いますが、イギリスでは、国家予算の大幅カットにより、公共サービスが縮小し、学生たちのデモなどが起きていました。報道の中では、サッチャー回帰への理想、などと評され、今のところ、反対の声の方が大きいように思います。わたし自身も、拙い知識ながら、不況時には、国が進んで消費を促す、というケインズのような考えを実行することが、当然の措置と思っていたので、イギリス政府の決断を初めて知った時、?、とは思いました。

 

けれども、現在のConservative Partyは、連立政権とはいえ、考え方の根底には、小さな政府を目指すものがあります。それを実践したのが、まぎれもなく、かつてのサッチャーであり、わたしの知る限り、当時も不況であったので、言わば、サッチャリズムとは、逆説的な経済刺激だったのかもしれません。それが、金融を中心にしたイギリスの復活をもたらしたのでしょうが、時代は、単なる規制緩和や政府の積極介入だけでは、経済回復が困難になっているのかもしれません。多少なりとも、持ち直したとはいえ、全体的に日本経済は、バブル崩壊から低調気味であり、今日の複雑な経済システムの象徴と言ったら、経済専門家に怒られるでしょうか? いずれにせよ、「法医学捜査班(Silent Witness)」には、こういう今の問題をも描いている特徴があります。

 


(2017年1月移転後撮影)

 

また、人間ドラマとして見るならば、シリーズ14において、法医学捜査班の中核を担っているDr Harryが、ハンガリーで恋人が殺害され、自身も危うく死の憂き目に遭いそうになりながら、事件の解決を試みようとする点です。また、Professor Leoに至っては、過去に娘を事故で失くし、現在の内妻とも言えるJanetとの間に子が宿っても、複雑な心境であることが、随所で描かれています。そういう心のうちを、シリーズ14では、Janetに正直に告白するシーンが、出て来ました。法医学者という医師のような人においても、トラウマのようなものを抱え、常に葛藤し、非常に人間的であるように表現されていると思います。

 

わたしは、古今東西のドラマにおいて、ヒューマン・ドラマはもちろん、エンターテイメント系のものにも、そういう要素を含んでいるものが好きです。ドラマは葛藤とも言えますが、ドラマと名乗るからには、やはり、人間的な葛藤などが下地になっていることが、大事なようにも思っています。「法医学捜査班(Silent Witness)」には、そういう要素とともに、犯罪ドラマならではのスリリングさや推理の面白さもあり、オススメできるBBCドラマの一つとなっています。

 

ところで、「法医学捜査班(Silent Witness)」において、Dr Nikkiという女性法医学者がいますが、演じているのは、Emilia Foxになります。このドラマで初めて知り、独特の妖艶さがあり、法医学者の役も結構ですが、怪しい役柄も魅力的なように思います。日本でも知名度の高い「Merlin(魔術師マーリン)」での魔女(?)のような役も、Emilia Foxにお似合いでは、と独り思っています。Dr Nikkiも、「法医学捜査班(Silent Witness)」の中で、他の人物と同様、人間的な葛藤なども持ち、Series14においては、少女殺害の件で、仕事を越えた同情と恐れを抱えていました。それもまた、今日的な問題とヒューマン・ドラマの融合とも言えると思いますが、皆さんは、いかがお思いになるでしょうか?

 

長くなりました。今回もまとまりのない記事となっていますが、何かしら、皆さんのお役に立つようであれば、この上ない喜びです。次回もまた、よろしくお願いします。

 

 

 



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