スタイルの原型が覗える感覚的映画 北野武監督作品 3-4X10月

北野武監督が脚本とメガホンを務めた最初の作品が、「3-4X10月」である。当初読み方は、「さんたいよんかけるじゅうがつ」であると思っていたが、正確には「さんたいよんえっくすじゅうがつ」であるそうだ。公開が1990年であり、監督一作目の「その男、凶暴につき」の高評価により、二作目が撮れたとも言える。

 

物語は、柳ユーレイ演じる雅樹を中心に展開する。

 

雅樹は草野球チームの一員であるが、ほとんど野球を知らない。三塁コーチをしても指示を出せず、ホームランを打っても先のランナーを追い越し、負け試合を演出してしまう。そんな雅樹はガソリンスタンドの店員であるが、引き継ぎ業務を理解できず、大友組のヤクザとトラブルになってしまう。

 

草野球チームの監督でスナック経営者の隆志(ガダルカナル・タカ)は、元大友組に属し、直談判に事務所へ行く。丸く収まる訳もなく、雅樹はチーム仲間の和男(ダンカン)と共に、拳銃を入手するため、沖縄へ飛んだ。

 
 

 
 

以上、「3-4X10月」の大雑把な内容である。全体的には静かな映画であり、淡々とした描写が続くので、退屈に感じてしまう人もいるだろう。

 

公開当時、わたしは、「その男、凶暴につき」と同様、浪人生であり、映画館では見なかった。テレビで視聴した記憶もなく、学生になってからレンタルビデオで借りたのが、初めてだった。見終わった後、不思議な感覚がし、良し悪しなどを超えていたように感じた。先日見返した時でも同じようであり、頭で理解しようとすれば、掴みきれない作品かもしれない。

 

これを鑑みれば、「3-4X10月」は、感覚的映画と言える。熱狂的ファンがどのように思うか分からないが、鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」に似たようなところがある。映画やドラマなどには、人それぞれの好みがある。人の関係と同じように、合う合わない作品がある。

 

「3-4X10月」は、まさに合う人には合い、合わない人には合わず、決して大衆向き作品とは言えないだろう。変な表現だが、北野武監督の体液を感じる。

 
 

 
 

むしろ、そうであるからこそ、今から見れば、北野スタイルの原型と言えるものがある。いや、もしかしたらすでに出来上がり、現在も変わっていないのかもしれない。突発的暴力と独特の間合いによる表現は、「3-4X10月」の中にも覗える。動と静の巧みな組み合わせは、「ソナチネ」や「HANA-BI」などにも通じている。

 

また、たけし軍団を使い、テレビ番組で何度も見たような笑いのシーンも出て来る。これは「菊次郎の夏」に通じるものであり、北野スタイルのスパイスのようにもなっている。もっとも、小津映画や黒澤作品等にも笑いが出てくるため、笑いはスパイス以上の何かがあるとも見なせる。

 

さらに、「3-4X10月」はトイレで始まり、トイレで終わる。語られていることが夢であるのか現であるのか、ウヤムヤな感じがある。これは、「Takeshis」や「監督!バンザイ」のような作品にも呼応している。感覚的映画の名に相応しい表現方法であるかもしれない。

 

もしかすると、「3-4X10月」は北野武監督作品を理解する上で、意外に重要な位置をしめているのかもしれない。感覚的な作品こそ、作り手そのものがにじみ出て来るものだろう。

 

「3-4X10月」は、北野武監督の体液による映画。やはりこれでしか、言い表せない。

 
 

 
 

 



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