絶妙な光と影と小津さん 北野武監督作品 アウトレイジ ビヨンド

2012年に公開された北野武監督作品が「アウトレイジ ビヨンド」である。2010年に上映された「アウトレイジ」の続編であり、シリーズ第二弾とも言える。

 

当時わたしは、北野武監督が作品を公開し続けていることを知っていたが、見る気はしなかった。もちろん、映画館でもレンタルでもだ。そのため、前作の「アウトレイジ」に引き続き、今回が初視聴となった。

 

物語は、より過酷なヤクザ同士の抗争に入ったと言えるだろう。

 
 

 
 

武闘派で知られた大友組が消滅した後、統括グループであった山王会は、ますます勢力を拡大した。会長が交代し、元大友組の金庫番が若頭となっていた。しかし、勢力下の組長たちよりも年が若く、しかも厳しい上納などを要求したため、組長たちの中には反目している者もいた。そんな中、刑務所で殺されたと思われた元大友組組長が出所することになった。後輩のマル暴刑事にけしかけられながらも、元村瀬組の若頭や関西の巨大グループである花菱会も加わり、山王会との抗争が激化して行く。

 

以上、「アウトレイジ ビヨンド」の簡単な内容である。実際、シリーズ三部作の中の第二弾であるので、つなぎのような作品と見なせる。より過酷になった抗争がどのような結末へ至るのか、それを期待させてくれるような映画でもある。

 

しかし、わたしは、結末への単なるつなぎ作品とは思えなかった。「アウトレイジ」以上に洗練された北野スタイルで描かれ、エンターテイメント映画でありながらも、映像の面白さを十分堪能できると感じた。

 
 

 
 

たとえば、光と影のバランスである。山王会や花菱会での会合シーンなどが典型的であるが、登場人物の背後に光と影がバランスよく配されている。仮に光が表の顔であれば、影は裏の顔でもある。欲望渦巻く、ヤクザの世界を光と陰で表現しているようだ。

 

また、会話の展開がリズミカルなシーンもあった。言い換えれば、小津さんの映画のように、短いセリフでカメラを切り替える場面である。そういう小津さんが作り上げた場面をマネをしている監督は多々いるが、短い場面が続くので、つながりが下手だと見ているこちらは、めまいを感じるようになる。

 

けれども、北野武監督の場合、それがない。小津さんのように時間を計算し、編集したのかはわからないが、リズムをきちんと考えていたのかもしれない。また、小津さんはローアングルであり、なおかつ、登場人物の視線をカメラに合わせず、微妙に斜めを向かせていた。北野武監督もまさに、似たような視線の取り方をしていた。これは監督の趣向などもあるだろうが、よりリアル感があり、面白さもあると思う。

 
 

 
 

わたしが見た中での感想であるが、これまでの北野武監督作品の中で、最も小津さんを意識したが、この「アウトレイジ ビヨンド」ではないかと思う。

 

小津さんと言えば家族映画であり、バイオレンス映画とは無縁であると思うだろう。また、テレビ局が制作している家族ドラマが、、彼の作品を継承していると考える人も多いかもしれない。しかし、肩入れしていることを認めながらも、北野武監督の方がより引き継いでいるような感じがある。

 

日本を描いたと言われる小津さんは、アメリカ映画が好きだった。しかも、全く異なるような大島渚監督作品をも賞賛していた。一見矛盾するようであるが、独創における適不適とはまた違ったところに、好き嫌いや賞賛があるのかもしれない。

 
 

 
 

いずれにせよ、「アウトレイジ ビヨンド」は単なるつなぎの映画ではなく、北野スタイルによる映像美を十分楽しめるエンターテイメント作品であると思う。

 

もし欠点を述べるのであれば、男ばかりの物語であり、女が出て来ないことだろう。けれども、穿った見方かもしれないが、北野武監督作品には、映像の向こう側に「母」がいるような気がする。もちろん、前作の「アウトレイジ」においてもだ。

 

一見すると女はいないが、映画全体の中にしっかり存在しているのでは、とも思う。そうでなければ、過酷な生死を描く映画は成立しないかもしれない。もっとも、内心ではシリーズの最後で女が出てくるかも、とは思っている。(笑)

 

「アウトレイジ 最終章」は、本年(2017年)秋に公開予定である。北野武監督作品に回帰したわたしは、映画館で鑑賞予定である。どんな結末になるのか、そして、どんな映像を見せてくれるのか、今から楽しみにしている。

 
 

 
 

 



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