味わいある下町人情喜劇 北野武監督作品 龍三と七人の子分たち

北野武監督作品「龍三と七人の子分たち」は、2015年に公開された。本年(2017年)秋に上映予定の「アウトレイジ最終章」を除けば、直近の映画である。当然、視聴したことがなく、今回初めて目にした。

 

ストーリーは、元ヤクザの龍三を中心に展開されて行く。

 

元ヤクザの龍三は、同居中の長男夫婦から疎まれ、引退した日々を持て余していた。元舎弟と賭け事などをしながらも、どこか物足りない暮らしだった。そんな時、オレオレ詐欺に引っ掛かりそうになり、京浜連合の存在を知る。龍三は元兄弟分たちを集め、一龍会を結成し、京浜連合と対立することになる。

 
 

 
 

以上、「龍三と七人の子分たち」の簡単なあらすじである。北野武お得意とも言える、ヤクザ映画の一つでもあるが、特徴は老人たちが主人公ということだ。しかも、全体的にコミカルな作りになっている。暴力シーンなどもあるが、つい笑ってしまう場面が多々散りばめられている。

 

たとえば、龍三が着替えなどをすると、必ずと言っていい程、屁をする。ドリフターズのコントで使われたような音であり、つい笑みが溢れてしまう。しかも、演じているのが藤竜也であり、彼の全盛期を知る人であれば、ギャップの差に頬が緩むだろう。

 

また、龍三たちが借金の取り立てを手伝うが、無情な請求に怒りを感じ、逆に龍三がお金を挙げてしまうシーンがある。こんなことができるか!、と龍三が取り立て屋を殴る場面があり、お前が言えるのか!、とツッコミを入れたくなる。これなどは、ビートたけしらしい笑いでもある。

 
 

 
 

けれども、単なる笑いではなく、どことなく人情を感じる。先の取り立て屋のエピソードであれば、ヤクザという悪人が弱い者を助ける。一般的な感覚であれば逆だが、そこに矛盾があり、最低限の心まで失っていないことをも表現している。

 

こういうシーンを見ながら、寅さんシリーズを連想した。もしかしたら、寅さんを意識しながら制作した映画かもしれない。龍三と寅次郎。3と2の違いである。

 

仮にそうだとすれば、個人的には「龍三と七人の子分たち」の方が好きである。理由は簡単だ。龍三たちの方がリアルな人に近く、単なるエピソードの連なりだけで、物語が成立している訳ではない、と感じるからだ。

 

また、映画タイトルから察せられるように、黒澤明「七人の侍」をも意識しているかもしれない。日本のアクション映画では、最高峰であろうと思うが、北野武監督も高く評価している。カーアクションは、馬を車に換えた「七人の侍」へのオマージュとも読み取れる。

 
 

 
 

「龍三と七人の子分たち」は、全体的に見れば、すでにベテランの域に達している作品であろう。笑いもあり、人情もあり、下町が舞台でもあるので、記事タイトル通り、下町人情喜劇である。

 

同時に味わい深さもある。元ヤクザたちであるのに、結局、自分たちを犠牲にし、悪どい若者たちを成敗してしまった。ビートたけし演じる刑事が、犯人の一人を殴るシーンは、それを象徴しているようにも思う。

 

こういうところに、北野武監督の優しさを感じ、クサイ話をさりげに作る彼らしさもある。「菊次郎の夏」に通じるような映画でもあろう。そして、どこかしら人の良心を信じていたいという意思も感じられ、それには人の悪も見なければいけないという思いも伝わって来るようだ。

 
 

 
 

見終わってから時間が経つにつれ、妙な心地よさが湧いて来た。この点は、全くテーマが異なる「Dolls」などと似たような感じだった。ただし、京浜連合との直接対決が映像に出てくるまで、少し長いように感じた。

 

龍三たちの紹介や再開、彼らだけのエピソードが少々縮められていても十分伝わったのでは、と思う。しかし、全体的に見れば、先で述べたように味わいある下町人情喜劇である。寅さんシリーズ以上の質の高さを感じる。

 

そう言えば、「龍三と七人の子分たち」には、街宣車や特攻服なども出て来る。色々な考え方があるが、「Brother」などを鑑みると、北野武監督は先人の意思を十分理解しているのでは、と感じた。こういうことは、寅さんシリーズではあり得ないかもしれない。これもまた、「龍三と七人の子分たち」を支持する理由の一つでもある。

 

今回はこれまでである。相変わらず中身が薄いが、何らかのお役に立ったのであれば、幸いである。次回もまた、不定期更新だ。

 
 

 
 

 



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