背後

暑さの中にも 涼し気な風が舞っていた

地元の神社へお参りに行き 本殿の前で頭を垂れた

隣の石碑へ移り 同じように頭を下げた

ふと私の心に 歯切れの良い声が 響き渡って来た

 

・・・・・・

 

わたくしは 間もなく旅立ちますが

まったく後悔はありません

実に清々しい気持ちで 

立ち向かってゆくことができます

 

芳子 典子を頼むぞ 

あの子はお前に似て 気の強い子だ

ケンカばかりするかもしれんが 

お前はお母さんだ 良い子に育ててくれ

 

かあさん 先立つわたくしをお許し下さい

いつも美味しいお握り 大変ありがとうございました

もう食べられないかと思うと ちょっと物足りないです

とうさん じいさん ばあさんに会って よろしく伝えます

 

明日には わたくしも出発します

崇高な想いを胸に しっかり飛び込む覚悟です

みな お元気で

 

・・・・・・

 

ふうっと声が止むと 石碑の背後の林がわさわさ鳴った

 

どこか嬉しげでもあり 悲しげでもある

どこか楽しげでもあり 憤りでもある

 

私は足が震えた ガタガタガタガタと

寒さからではない 畏怖を感じた

 

私にも妻子がいる これから帰宅する

明日には家族全員で 帰省をする

 

あとに続く者なり

 

私にその資格はあるのか・・

 

(^。^)(^。^)(^。^)