橋之上

〇橋之上
 

雲一つない夜空。人気のない橋の上に女が一人立っている。正面には街の灯と陸橋があり、列車が走り抜ける。

 

うつろな目で川面を見つめる女。三十路過ぎのキャリアウーマンで脳裏に中年男の姿。あざ笑いながら彼女が写ったスマホ画像を見る。若い女性とホテルへ入る男。

 

靴音が鳴る。女の背後に初老の男。シルクハットに燕尾服、片眼鏡にクルーゾー警部のような口ひげで時代を超越したような姿。

 

初老の男「(囁くように)お助けしましょうか?」

 

静かに水音が響く。