川辺り

ぽっかりとした穴に 猫が潜んでいる

黄色の瞳をこちらに向け じっと観察している

 

わたしは尋ねてみた

(何かようかい?)

 

夕焼けに映えた 川辺り

向こう岸に グラウンド
 
こちら岸に 公園

 

猫はベンチの側だった 胡麻塩のようなキジトラ模様だ

(お前こそ 何かようニャ?)

 

わたしはムカッと来たが 所詮猫だと思った

(こっちを見てるからさ)

(見ちゃ悪いニャ?)

(悪くはない 悪くはないが 少しなんだ)

(なんニャ?)

(こそばゆい)

 

猫が笑った 嘲るように笑った

わたしはまたもムカムカと来た 口調が荒くなった

 

(そんなにおかしいか?)

(ああ おかしいね)

(どうしてさ?)

(だってさ お前さ)

 

猫が右の前足を出し 口元に添えながら

ニャニャニャニャと 再び笑った

 

(何だ 何なんだよ? 何がおかしいんだよ? 理由を言えよ)

(だってさ お前さ)

猫が吹き出すのを堪え 続けた

(血の気の失せた 猿みたいなんだよ)

 

ニャニャニャニャニャニャと  広がった

ニャニャニャニャニャニャと  響いた

ニャニャニャニャニャニャと  ざわめいた

 

ふと見れば 川には橋が架かっている

古ぼけた木製で 壊れそうでありながら

壊れないような 不思議な感じだった

 

向こう岸 グラウンドが消えていた

こちら岸 公園がなくなり猫もいなくなった

 

脳裏に浮かんだ 

歩道橋から落ちると そこは線路だった

 

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 道半ば
日常