振り向いた先にあるもの

きらきらきらきら 満月の輝く夜でした

愛犬と共に 散歩へ行きました

 

雲ひとつなく 桜並木の川堤は

とても気持ちが良かったです

 

夏がすっかり終わり 季節はすでに秋

涼し気な風も吹いていました

 

川堤は いつもの散歩コースです

愛犬はクンクンクン 鼻を鳴らしながら

前へ進んでいきます

 

まだまだ元気な柴犬 メスの6歳

脂の乗ったお年頃 でしょうか?

 

川堤の途中には 小さな公園があります

ブランコとジャングルジムとベンチしかなく

昼間は小さな子供たちが 遊んでいる程度です

 

散歩の折返しの目印ですが 

その日はなかなか視界に入りませんでした

 

青白い光が煌々と輝き 周囲を見ることができます

それでも 公園が現れませんでした

 

おかしいなと思っていると 背後から声がしました

ザッザッと足音もし なにやら大勢の人のようです

 

時間は夜半少し前 川堤沿いには住宅街もあります

非常識な と思いました

 

犬を見ると相変わらず クンクンクンクン

マイペースな奴だと思いながら 先へ進みました

 

それでもまだ 背後の声が耳に入ります

むしろどんどん大きくなっていました

 

わたしは怖くなってきました

一体背後には何がいるのか?

わたしは不安にかられました

一体背後では何が起きているのか?

 

振り向こうか振り向くまいか 悩みました

犬はクンクンクンクン 前に進んだままです

 

背後の声がさらに大きくなっています

わたしの足がガタガタ震え 背筋に冷たいものが走りました

額も濡れているようで このままでは風邪を引く

そんなことも思ってしまいました

 

背後の声がはっきりして来ました 

大勢の人々の合唱のようでした

 

(お前はどこの 何奴だ?)

(お前はどこで 生まれたか?)

(われらはいるぞ 故郷に)

(われらはここだ わが町に)

(お前はどこで 何してる?)

(お前はどこの 住人だ?)

 

わたしは息苦しくなりました

肺にも喉にも 背中にもお腹にも 痛みが走り

全身に苦痛を感じました

 

振り向こうかどうしようか 悩みました

振り向きたい けれど怖い

振り向かない けれど見たい

好奇心と恐怖心の狭間にいるようでした

 

全身になおいっそう苦痛を感じ始めました

このままでは・・ こんなことも思いました

 

意を決しました 

わたしはリードを引き 犬を止め

思い切って 振り向きました

 

何もありませんでした 

緑葉を過ぎた 暗がりの桜並木のみがあり

風でさわさわしていました

 

わたしは拍子抜けしました 苦痛も和らいできました

一体あの声は何だったのか? わたしには分かりませんでした

 

犬の散歩を続けました 折返しの公園が現れました

川堤を戻っていきました

 

歩きながら わたしは再び考えました

一体あの声は何だったのか?

ずっと自分に問うていました

一体あの声は何だったのか?

 

ふと わたしの頭に鳥居の姿が浮かびました

しばらく訪れていない 近所の神社の鳥居でした

わたしは少し心が和んできました

 

翌日 雲の合間から陽が照っている中

わたしは近所の神社へ行きました

 

鳥居を抜ける前に一礼をし 参道を歩き

本殿の前に立ちました

作法を守り 深々頭を下げました

その時 一陣の風が吹き 背後の木々がざわめきました

 

振り向いた先にあるもの 暗がりの繋がり

 

(^。^)(^。^)(^。^)

 

空間