夏の終わりに

雲ひとつない満月の夜 ある林の中で

二匹のセミが 一本のクヌギに止まっていました

 

セセが言いました

「いい月夜だなあ」

ミミが答えました

「そうねえ。そうよねえ」

 

二匹は羽を重ねています

 

「オレらの子、スクスク育つかな?」

「育つわよ。大丈夫よ」

「そうかなあ。どうかなあ」

「大丈夫よ。大丈夫に決まってる。アタシらの子だもん」

 

セセが甲高い声で笑いました

 

「土から何人出られっかなあ?」

「さあ、何人だろう?」

「オレはね、全員だと思ってる」

「あら、そうだったの?」

「いやね、そりゃあね、やっぱりね、うん」

 

ミミが微笑みながら言いました。

「全員よ、きっと」

セセの羽が少しだけ力強くなりました。

 

「さあ、オレらも行かなきゃな」

「そうね」

「どこがいい?」

「どこだろ?」

「どこにするよ」

「どこにしよ」

 

二人で迷っていると セセが閃いたように言いました

「やっぱりさ、どうせならあの月にしよう。折角だからね」

ミミがキュッと前よりも体を寄せました。

 

セセとミミが 飛び立ちました 

忙しく忙しく 羽を動かしました

青白い光へ向かって 煌々と輝く光の源へ向かって

 

セセとミミがどうなったのか 誰にも分かりません

 

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背後