自宅近くの路地を通ると
ある物語を思い出す 猫町
ゴロニャ~と 猫の声がし 周囲が猫だらけになる
デジタル時代の現代でも 猫島がある
猫ばかりの島で 海人のお見送りやお出迎えをする
ゴロゴロニャ~ ニュ~ニャ~ゴロ
あちらこちらに 猫がいる
つい頬が緩むだが 路地の猫たちは違う
ギロリとした鋭い両目で 私をにらみ
キラリと光る刃の瞳で 私を見つめ
今まさに 攻撃せんとする姿勢
ギャ~ナゴ ギャ~ギャ~ナゴ
ナゴギャ~ ナゴナゴギャ~
ゾクッしながらも 私は歩いてゆく
ギクッとしながら 私は進んでゆく
自宅があるから 仕方がない
ギャ~ナゴ ギャ~ギャ~ナゴ
ナゴギャ~ ナゴナゴギャ~
ギャ~ナゴ ギャ~ギャ~ナゴ
ナゴギャ~ ナゴナゴギャ~
自宅に着く度 ホッとする
猫路地はほんの短い距離 それでもヒヤヒヤする
玄関を開けると 傷んだ木造キッチン
昭和の一時期を 醸し出している
靴を脱ぐと 決まってやって来る
チリチリンと鈴を鳴らす 茶トラの娘
尾っぽを高く上げ 鳴きもせず喚きもせず
クルリと尾っぽを丸め その場にオスワリする
黄色な眼に 細く黒い瞳 私をじっと見つめる
たぶん こんなことを 思っているのだろう
(飯よ!)
路地の猫たちは もしや まさか そんな
私の心に すきま風が吹く
食の怨みは 生の怨み 食への希求は 生への希求
猫たちの叫びが 私の耳に轟く
ギャ~ナゴ ギャ~ギャ~ナゴ
ナゴギャ~ ナゴナゴギャ~
ギャ~ナゴ ギャ~ギャ~ナゴ
ナゴギャ~ ナゴナゴギャ~
しぶしぶながらも 路地猫たちに促され 猫飯を用意する
ひょっとすると いやきっと この家は
出掛ける度に いつも思うことだ