ヒヤッとしたその先

靴音が聞こえる コツコツと

そっと静かに わたしに近づく

橙色に燃え上がる炎に

涅槃のような喜びや悦びを感じる

 

わたしは何かである

わたしは何かでもない

ただわたしが何かであって何かでもない

 

靴音が響き渡る コツコツと

しっかりと確実に わたしに向かってくる

連鎖の炎が次第に大きくなり

涅槃のような悲しみや哀しみを感じる

 

わたしはそこにいる

わたしはそこにいない

ただわたしがいながらもいない

 

靴音が間近にある コツコツと

歩調を合わせ わたしと一体となる

巨大な炎がわたしを包み

涅槃のような怒りや憤りが脈動する

 

わたしは融けている

わたしは固っている

ただわたしの融解と凝固がそこにいる

 

炎から手が伸びる

細くしなやかで艶やか

わたしも手を伸ばす

太く短く醜く汚い

 

指先が触れ 徐々に距離が縮まり

固く握り合う 

 

ヒヤッとしたその先

 

柔らかな生き物たちがひしめき合い

競り合い騙し合う 均質な世の中だった

 

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