川堤

夕暮れ時の川堤 少し冷たくなった風

涼子と隆二が 膨れたビニール袋を手にし

ゆっくりゆっくり 歩いている

 

(オレね きっとね 歌手になるよ)

(へえ じゃあ もっと頑張らないとね)

(うん 今度さ のど自慢に出てさ 絶対優勝だ!)

 

時折キンッとするような声 辺りに響き

色を変えた道草たちが ざわざわなびく

薄雲たちも 夕暮れに溶け込むようだ

 

(どう? 上手い? 上手くない?)

(上手よ上手 上手い上手い)

(オレね きっとね 歌手になってね 有名になるんだ)

(どうして?)

(だってお母さん もっと楽になるでしょう)

 

飛行機が横切り 一筋の人工雲が流れた

涼子と隆二が立ち止まり しっかり目にし

薄紅の光が 河川敷一体に輝いた

 

(靖子 待ってるから 早く行こう)

(アイツ 起きてるかな? 寝てるかな?)

(いつも通りでしょ きっと)

(じゃあ 寝てるね)

 

二人が歩み出すと 一匹の赤とんぼが

背後でくるりと回り 川堤を横断

道草たちも そっと 静かに 後押しした

 

あと少しで 年末がやって来る

 

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 反射