薄暗い中で わたしは小さな旅に出る
愛娘を連れて 異種の愛娘を伴って
桜並木や小さな公園を 通り過ぎる
クンクン鳴らす愛娘は かつてとは違う
食欲旺盛でも 走らない 進んで前へ行かない
笑顔を作っても 目やにが多い 白髪が目立つ
すでに年上 すでに老女 すでに後期高齢者
知らないうちに わたしより老いている
それでも 必死になって歩こうとする
それでも 必死になって従おうとする
犬という生き物の宿命であり 性である
並行しながら 時折立ち止まる
周囲の匂いを嗅ぐ 周囲の状況を確認する
ふと 後ろを振り返る
夜道の面影 夜道の風景
ときどき マラソン・マンやウーマンを目にする
一瞬の出逢いと別れ 一瞬の交差 現在 過去 未来
一体わたしは 何をしているのだろうか?
一体わたしは 何をして来たのだろうか?
一体わたしは 何をしていくのだろうか?
まもなく 娘との時間が訪れる
せめて 月光の薄明かりだけでも この目に宿していたい